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▼これまでのあらすじ
健太が入学した中学校に軟式テニス部ができた。ものめずらしさから大勢が入部したが、新入部員を待っていたのは空き地にコートをつくる土木作業の日々だった。石くれを取り除いて土を入れ、何度もローラをかけて、なんとかコートが完成した。 まがりなりにも手づくりのテニスコートが完成した。その時点で残っていた部員は、健太も含めて7人だった。 体格はごついが気立てはやさしいミッちゃん。 ちょっと気取ってみせるが二枚目になりきれないナンコ。 運動神経は学年トップ、身のこなしは融通無碍だが性格は生真面目なキシやん。 おっちょこちょいを絵に描いたようなターさん。 小学生といっても通用する、つるりとゆで卵みたいな小柄なキンちゃん。 皮肉っぽいマイペースを装うものの善良さがにじみ出るヤーベエ。 そして、テニスコートに滞留する時間の長さと、どこで仕入れてくるのかテニスのウンチクで一目置かれていたミタ公こと健太。 7人は、先生からラケットの握り方を教わり、振り方を教わった。最初は体の前に落としてバウンドさせたボールを打ち、次に手で投げてもらったボールを打ち、やがてネットを挟んでボールを打ち合うようになった。 はじめのうちはボールの距離感もタイミングもとれず、打点は前後左右にばらつき、打球はあらぬ方に飛んで行った。それでも、慣れというのは恐ろしい。そのうち、パコーンという軟式テニス特有の快音とともにボールが狙った場所に飛んでいく回数が増えていった。球拾いのためではなく、打ち合いで息が切れるほどラリーが続くようになってくると、みんなテニスの魅力にとり憑かれてしまった。 最初はフォアハンドストロークだけだったショットの種類も、バックハンドストローク、ボレー(ノーバウンドで打ってもいいんだ!)、スマッシュ、サーブと増えていった。連日、早朝の自主練習で汗を流し、放課後も暗くなるまでボールを追った。夏休み前には試合形式の練習もこなせるようになった。 夏休みに入っても連日、炎天下で練習に励んだ。 ある日、水を飲みながら一休みしていたとき、先生が「10月にH市の新人戦に出場する」と言った。 みんな大いに盛り上がり興奮した。 先生が出場ペアを発表した。健太はミッちゃんと組むことになった。あとはナンコとターさん、キシやんとキンちゃん。 「ヤーベエはどないなるんや?」と6人が考えるのと、「今回は悪いけど、ヤーベエは控えや」と先生が言うのと、ヤーベエが「応援したるさかい、おまえら絶対勝てよ」と言うのが、ほとんど同時だった。 ペアを発表したあとで先生は付け加えた。 「学校としても初めての参加やし、負けてもともとや。雰囲気に慣れるつもりで気楽にやってええぞ」 そんな場面での常で、ターさんが間髪入れず突っ込んだ。 「先生、そんな甘いこと言うとったらアカンわ。よその学校は1年生なんか球拾いしかさせてもろてへん。それに比べたら、ボクらは1年生だけやさかい、よその学校の2年生よりようけ打っとるぐらいやで。初めてでも負けるかいな」 「そうや、そうや、先生、ターさんの言うとおりや」 手をたずさえてコートづくりから始めたチームの結束は強い。お気楽ぶりは一瞬にして伝染し、全員、もう優勝した気になってうっとりと遠くを眺めた。休憩後の練習では、みんな明らかにいつもより大きな声を出し、強くボールを叩いた。 第1話 放課後のテニス
by tennis_passtime
| 2007-05-01 16:54
| ●連載ミニ小説
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