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神奈川区団体戦。T-Oneの3回戦は2勝2敗となり、チームの勝敗は5試合目の男子ダブルスで決まる展開となった。
私自身は1試合目に起用されたがあっさりと負けてしまった。2試合目も負けた時点で、チームの敗退を確信した。ところが、次の2試合に勝ったため、逆転勝ちの目が出てきた。おいおい、勝つかもしれないよ……と思いながら、私はM越・Yasuペアの試合が行なわれている4番コートに走った。 コートサイドにいたYasu夫人に、おそるおそる「どうなってる?」と訊いたら、期待と不安を同居させたような表情で答えが返ってきた。 「いま3-3で、いい感じです。でも、M越さんの足が……」 見ると、M越さんが右足をひきずっている。 「M越さん、大丈夫、大丈夫。足が攣って死んだ人いないから」 いささかブラックな激励を飛ばしたが、深刻なようだ。 M越選手はほとんど動くことができない。手の届くところに来たボールにラケットを出すのが精一杯という状態だった。パートナーのYasu選手は、ラリーになることを避けて一発勝負に徹しているように見えた。40-15からYasu選手のストレートリターンが相手前衛の横を抜けた。ゲームカウント4-3。すごい。勝ってしまうかもしれない。 しかし、M越選手は立っているのも辛い状況だった。 チェンジコートで応急手当をしていると、大会委員長がやってきた。 「続けるか、続けないか、結論を言ってください」 大会の進行が遅れ気味だったので、たびたび中断する4番コートの様子が気になったようだ。棄権してくれればありがたい、という気持ちが口調ににじみ出ていた。相手ペアも心配そうに見守っている。 これ以上、足を投げ出して休んでいることはできない。せっぱつまった空気が4番コートを覆った。 Fronta監督が最後の確認をした。 「どうですか? 無理そうならやめてください」 私はその横で、もしかしたら勝てるかもしれない試合だ、できれば続行してほしい、と思っていた。チーム2敗のあと3面同時進行となっていたため、M越選手は他の試合の結果を知らない。「いま2勝2敗なんです」と言いたくなる気持ちをこらえた。そんな私の心を読んだように、M越選手がたずねた。 「試合はどうなってるの?」 「2-2」 「続けるよ」 M越選手はラケットを杖のように突いて立ち上がった。 ゲームカウント4-3からの8ゲーム目はM越選手のサービスゲーム。ファーストサーブが入らない。しかし、アンダーハンドのセカンドサーブを、なんと相手が2本リターンミス。やりにくそうだ。 逆に、力みが消えたM越選手からミスが消えた。パートナーのYasu選手は、「M越さんは立ってさえいてくれたら、ボク一人で勝ってみせる」と思ったかどうかはわからないが、鬼神が乗りうつったようなショットで相手をたびたびたじろがせた。 大会委員長が「勝っちゃうかもしれないよ」とつぶやくのが聞こえた。 1ゲームずつ取り合って5-4でチェンジコート。Yasu選手のサービング・フォー・ザ・マッチである。 強烈なファーストサーブで40-15になった。なんとダブルのマッチポイントだ。しかし、ダブルフォールトがあって40-40。ノーアドバンテージの1発勝負となった。 5-5にされたら、さすがにもう勝てないかもしれない。 しかし、M越・Yasuペアは臆することなく立ち向かう。再び三度の渾身のサーブが放たれた。 エースか!? と息をのんだが、鋭いリターンが返ってきた。しかし、Yasu選手はあわてず、ぐっと足を踏んばって腰を落とし、狙いすましたフォアのストレートの強打を相手前衛に放った。抜けろ! T-Oneの願いを乗せたボールは、コードにわずかに触れて軌道を変え、前衛のラケットをすり抜けた。 ベスト4進出が決まった瞬間だった。 相手ペアに敬意を表したい。何度か進行が中断したし、動けない相手をあからさまには攻撃しづらいという当然の思いでコースも制限されたことだろう。4人とも万全の状態なら、結果は逆だったかもしれない。恨み言のひとつも言いたくなるのが人情だが、そんな素振りはみせず、われわれの勝利を祝福してくれた。 さて、チームは準決勝に進出したが、M越選手はもう1試合できる状態ではなかった。奇跡的勝利の立役者である“鬼神Yasu”に代わって私がM越選手のパートナーとなるオーダー替えを行なったうえで、5試合あるうちの男子ダブルス1試合を棄権し、残り4試合で決勝進出にチャレンジした。しかし、相手は強豪(最終的に優勝した)で、残り4試合はすべて負け。実力差が歴然ととしていたが、大満足の結果であった。T-Oneの挑戦は続く。
by tennis_passtime
| 2007-02-25 10:32
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