
フェデラーin Japanで、もう一回書きます。ネタが古くてすみません。その分、味あるアルヨ。
フェデラーが来ると聞いてAIGオープンのチケットを買ったのは、大会のたしか4~5カ月前。本当に来るのか、来なけりゃチケットの値打ちは半減だ、と気をもみながら待った甲斐がありました。King of Tennisは約束を守って本当に来てくれたのです。エライ。
雨続きでゴメンなさい
来てくれたのはうれしいが、天気が悪い。どうやって試合を消化するんだろうと思っていたら、荏原湘南スポーツセンター(SSC)の室内コートで、観客抜きでやるのだという。はるばる日本に来て、有明からさらにはるばる藤沢まで運ばれ、観客なしのコートで試合をさせられたのではたまらない。選手の気持ちを思って、「ゴメンなさい」と手を合わせた日本人は少なくなかったのではないでしょうか。
「フェデラーは藤沢までの切符を間違えずに買えるかなあ? そういえば、ちょっと強そうなガールフレンドがいたなあ。あなたが日本に行くなんて言うから、こんなことになるのよ、なんて叱られたりしないかなあ」と心配しました。それは冗談ですが、なにかと不自由することは想像に難くありません。
「こんな雨続きのテニス後進国、2度と来るか」と愛想をつかさないかと、なぜか突然日本人代表になったわたしは、大いに気を揉んだのでした。かつて、ランキング1位だったころのクエルテンが有明に来て、シャワールームが遠いことにあきれて翌年は来なかった、という悲しい話まで思い出しましたよ。
ところが、ところがところが、皇帝フェデラー様は、日本がことのほか気に入ったようなのです。それどころか、なんと、なんとなんと、来年も来てくれそうな気配なのです。もしかして、フェデラーっていいヤツ?
フェデラーが東京で書いたブログ
フェデラーは東京滞在中に
ブログを書いていました。ATPのサイトで読むことができます。今週はスペインのマドリッドなので(ナダルとの決勝戦になりそう)、もう昔話みいたいですが、トッププロが大会中、異国の空の下でどう過ごしているのかがわかる興味深い内容です。かいつまんで紹介しましょう。
ブログは10月2日から8日までの7日間にわたって書かれていますが、カバーされているのは、フェデラーが日本に降り立った9月29日からです。常識的にはスタッフの代筆でしょうが、なんとなく本人が書いているような感じが無きにしもあらず(元々の
英語ブログには写真も出ています)。それでは、完全にミーハーと化した横浜テニス研究所所長が贈る、フェデラーの東京日記です。
ロック・スターになった気分
[9月29日(金)]
初めて日本に来た。日本ランキング1位の添田豪を相手に有明で初練習。添田は才能豊かなナイスガイだ。大勢のファンがボクを写真に撮ろうと押し寄せる。おいおい、ただの練習だぜ。ロック・スターになった気分だ。
2カ月前に主催者から、朝センターコートで練習してくれないかと頼まれ、何を言っているのかわからなかったが、今日その意味がわかった(←テニスをする人なら、だれだってフェデラーの練習を見たいと思いますよ)。
ダブルスのパートナーは皇太子
[9月30日(土)]
皇居で皇太子殿下秋篠宮殿下とテニス。雅子妃と愛子サマ秋篠宮妃もリトルプリンセスもニコニコ見ていた。皇居にはクレーコートが2面。ジュニア選手が2人来ていて、ダブルスのゲームをした。皇太子秋篠宮とボクのペアが勝った。皇太子彼は頼りになるパートナーで、素晴らしいウイナーを何本か放った。
日本に居るということがエキサイティングだ。初めての国を訪れること自体が久しぶりの体験でもある。日本で5、6回プレーしたことがあるミルカ(←ご存知、マネジャー兼恋人。「兼」は変か)から話は聞いていたが、期待以上に日本ですごす時間は楽しい。アジアではバンコク、上海、ドバイ、ドーハを体験ずみだが、ずっと日本に来たいと思っていた。母国スイスとはまったく違う、興味つきない歴史と文化を持つ国だ。街はクリーンで、交通もそう悪くない。ニューヨークやローマのような街を想像していたが、もっとリラックスしていて、人々は親切で礼儀正しい。
わたしのドライバーを務めてくれるミスター・イワオは、スイステニス協会のピン・バッジを付けている。聞けば、フェドカップで日本と対戦したスイスチームのドライバーも務めたとか。流暢な英語をしゃべる人で、東京滞在中の情報源になってくれそうだ。
夜は日本テニス協会の盛田正明会長としゃぶしゃぶディナー。
[10月1日(日)]
(記載なし)
かつては肉も魚も食べられなかった
[10月2日(月)]
巨大なゲームセンターで自分が登場するセガのテニスゲームを発見。自分が登場するのがおかしい。ボレー名人(ヘンマン)と対戦しようかと思ったが、トレーニングのためにホテルに戻らねばならず断念。
トレーニング後、2006年バカラ・アスリート大賞(Baccarat Athlete of the Year)の授賞式に出席。他の受賞者は女性登山家のアナベル・ボンドとフィギュアスケーターの荒川静香の2人。北京とロンドンでは金メダルをめざそう。
授賞式後、インタビューを受ける。日本のメディアはよく準備していて、興味深い質問や笑える質問をぶつけてくる。『アエラ』の表紙写真の撮影も行なう。撮影は時間がかかるが、カメラマンの仕事振りを見るのは楽しい。
夕食は銀座で寿司。10年前までは肉も魚も食べられなかったが(←ホンマかいな!)、数年前から食べ始めた。いまでは寿司も刺身も大好きだ。和食は米と野菜が多くてヘルシーだ。
7歳の少年にドロップボレーを決められる
[10月3日(火)]
朝11:30起床。ぐっすり眠れた。ホテルの部屋のTOTOウォシュレットに感激。自分の家にも買うことにしよう。
5時から6時まで有明で練習。練習の最後に、カイトという7歳の男の子をコートに招き入れた。数ポイント打ち合ったが、最後はドロップボレーを決められた(←大ウケだったでしょうね)。
練習後、大会主催の歓迎パーティに出席。夕食はティム・ヘンマン、ステファン・キューベックと鉄板焼(←ヘンマンとずいぶん仲がいいようです)。
ガットの張替えを忘れるハプニング
[10月4日(水)]
ミルカとトニー・ローチ(コーチ)と朝食。ヴィクトル・トロイキ(セルビア)との初戦(2回戦)に臨む。昨日の練習後、歓迎パーティに急いだため、ガットの張替えの手配を忘れていたのだが(←ミルカの仕事と違うの?)、試合に間に合うよう大会側が手配してくれて事なきを得た。
センターコートに歩み出ると会場は大騒ぎ。大勢のファンに歓迎されてエキサイトした。しかし、まったく未知の相手とやるのは難しい。2セット連続タイブレークで、なんとか勝利。7-6(2)、7-6(3)。試合後はインタビュー、ドーピングテスト、ストレッチとマッサージというお決まりの長いルーティン。
夕食はミルカと、他の2人の友人といっしょに、先日盛田会長に招待されたしゃぶしゃぶレストランで。
悪い夢にうなされてむこうずねを強打
[10月5日(木)]
朝4時、なんと悪夢でうなされて目が覚める。思わず立ち上がりフラフラ歩いた拍子に、ベッドの角でむこうずねを強打する。昨夜の日本酒のせいか、ツアー暮らしのストレスのせいか? ミルカの助けで気持ちを静めて寝直す(←トッププロが恋人同伴で世界を転戦する理由はこんなところにあるのかも)。
朝食はvinegar shot(←何でしょう?)、オレンジジュース、カプチーノ、水、ラズベリーシロップをかけたワッフル、パッションフルーツ、ミルクに浸したコーンフレーク。試合がある日はだいたいこのパターン。
試合が3試合目に予定されていたので11時に有明入り。前の2試合は女子で、どちらもフルセットだったため、長時間待たされた。控え室で、音楽やおしゃべりやインターネットで時間をつぶす。気になっていたブログに対するファンの反応もチェック。喜んでもらえているようで嬉しい。
3回戦の相手は昨年の優勝者ウェスリー・ムーディ(南アフリカ)。長く待たされて入る試合は難しいものだし、彼の最初のサービスゲームで3連続エースを取られたときには少し心配にもなったが、最終的には、それほど苦労せずに勝つことができた。6-2、6-1。
今日も観客は満員。屋根が閉じられていたせいで、なおさら熱気を感じた。観客動員はこの調子で最後まで行ってしまうのだろうか。日本のファンの歓迎は熱烈だ。日本でプレーするのが大好きになった。
ホテル内のフランス料理のレストランで夕食。17,000円の勘定を17,000ドルと勘違いして一瞬ショックを受ける。明日は和食にしょう。
鈴木貴男に冷汗の勝利
[10月6日(金)]
前夜は雨で消化が遅れ、最後の試合が終わったのは午前3時24分だったそうだ。遅く終わった新記録らしい。さいわいボクはとっくに寝ていたが。
朝から土砂降りの雨で練習がまったくできない。ウォーミングアップ不足を補うために、通常は5分の試合前の練習が10分になった。
鈴木貴男との試合はハイレベルなものになった。第2セットはちょっとした幸運に恵まれてブレークでき、7-5で取った。3セット目がタイブレークになったのは両者のサーブが良かったからだ(←この試合をナマで見られたのはラッキーでした)。6-4、5-7、6(3)-7で勝ち。
有明コロシアムでの戦いは日に日にヒートアップしている。日本人相手の今日はなおさらだった。しかし、応援はフェアだった。観客席に尊敬する横浜テニス研究所の所長さんがいた(←もちろんそんなこと書いてないアルヨ)。
有名な弁慶というサムライ(←じゃないと思うけど)はむこうずねが泣き所だったそうだが、ベッドの角で打ったむこうずねは回復しており、もう問題はない。日本のサムライには興味をそそられるし、日本刀はすごくクールだ。せっかく東京にいるのだから、日本刀を買いたいところだが、機内持ち込みや通関がやっかいそうなので、次に来る時になりそうだ(←日本テニス協会は刀で釣って来年も出場してもらえばどうかしら。なあに、質流れでもわからないでしょう)。
試合後ストレッチをしていたら、トーナメントディレクターのミスター有沢三治がやってきた。「痛い!背中が痛い!」と叫んだら、「1日に2度は驚かされないよ」と切り返された。1回目はもちろん、ファイナルセットがタイブレークとなった鈴木との試合である。
東京の次のトーナメントはスペインのマドリッドだが、来週の今日、その前にバルセロナに飛ぶ。ナイキのCM撮影のためだ。内容はトップシークレットのため明かせないが、ナイキのアスリートが複数登場する、アジア太平洋地域限定のフィルムだ。2007年初めには日本のファンに見てもらえると思う。
試合後、夕食に出たついでにいくつかショップを見て歩く。大好きな盆栽を発見。日本人は何事でも細部まで神経が行きわたっていて、あらゆることを調和させている。
近づくインドアシーズン
[10月7日(土)]
昨日と打って変わった晴天。屋外で練習。観客は今日も満員。初日から大盛況だ。ベンヤミン・ベッカー(ドイツ)との準決勝に6-3、6-4で勝ち、優勝まであと1勝となる。
東京が終わったらインドアシーズンに突入。マドリッド、バーゼル、パリ、そして上海(ATPマスターズカップ)。インドアも今シーズンの滑り出し同様、うまく行ってほしい。過去2年間はケガのため思い通りにいかなかったので、今年は頑張りたい。
上海が終われば、デビスカップの決勝戦に出場する選手以外はオフに入る。その休暇が終われば、コーチのトニー・ローチと2週間ほどフィットネスと練習を行ない、オーストラリア・オープンの防衛に臨むことになる。
試合後、ミルカと銀座でウインドウショッピング。和光の時計台の前で記念写真。茶器と茶托のセットを土産に買う。日本には茶道の文化がある。日本の歴史と文化には感銘を受けるが、日本に来てそれを学べたことがうれしい。夕食は鉄板焼き。明日の決勝戦に備えて早々に就寝。
ハッピーなテニス人生に感謝!
10月8日(日)
いよいよ決勝だ。昨日に引き続いて快晴。10時30分からセンターコートでウォーミングアップを開始。試合前にテーピング。去年の秋に足首を痛めてから、いつも両足首に行なっている。試合前のロッカールームで決勝戦の相手のティム・ヘンマン(英国)と雑談したり、ラグビーボールを投げあったりして遊ぶ。
ティムには出来の悪いゲームが1つあり、それに乗じて1セット取ることができた。セカンドセットは非常に良いプレーができ、信じられないようなパッシングショットが打てた。6-3、6-3で勝利。ネットに出てくる選手は少なくなったが、そういうタイプの相手とやるのは好きだ。狙い定めたパッシングが快感だ。一昨日の鈴木との試合は白熱した。
今日これから、友人達と祝勝会を兼ねた夕食に行く。どこに行くかは決めていないが和食にしよう。明日は日本を離れてスイスに向かう。インドアシーズンの準備が始まる。
この1週間、ブログを書くことで自分を客観視できて有意義だった。大好きなテニスをして素晴らしい暮らしができるのは幸運なことだ(←東京の優勝賞金はフェデラーが出る大会にしてはやや控えめな1400万円、それを加えて年間獲得賞金額7億4000万円、生涯獲得賞金額31億5000万円!)。故郷バーゼルの友だちと遊ぶためにテニスに励んでいたら、ここまで来た。この幸運をけっして当然と思わないようにしよう。
AIGオープン大盛況の立役者
と、まあ、だいたいこんなことが書いてありました。ユニセフの親善大使を務めたり、ロジャー・フェデラー財団を通じて社会貢献活動を行なうなど、尊敬すべき人物だということもわかりました。
AIGオープン終了後、朝日新聞(10月11日夕刊)に、「フェデラー効果 シャラポワ超す」という見出しで、大会が7日間で7万2368人を集めたと報じられていました。まことにめでたいことです。
ブログの記事からもうかがえるように、フェデラーも大会の盛況ぶり、とりわけ自分自身に向けられる熱いまなざしが心地良かったようです。朝日新聞によると、「日本は思った以上に快適だった。タイトルを守りたい気持ちもあるし、来年以降もぜひ来たい」と話したそうな。
今年有明に行かなかった人には、来年はぜひ観戦されることをお勧めします。テニスをやっていない人でも楽しめると思います。