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前回(ラケット研究1)はラケットの3つの重さ――ウエイト、ピックアップウエイト、スイングウエイト――について説明し、実際にラケットを振るときの重さであるスイングウエイトがいちばん重要な意味を持つことを強調しました。
ラケットを振るときの重さとは慣性モーメント、すなわち、回転運動するラケットに働く抵抗のことです。ラケットに働く慣性モーメントには、回転軸の異なる3種類のものがあります。 グリップ部(正確にはグリップを握った中指あたりからコートに垂直に下りる線)を回転軸とする慣性モーメントがスイングウエイト(swingweight)であり、ラケット頭頂部とグリップエンドを結ぶラケットの長軸まわりの慣性モーメントがツイストウエイト(twistweight=ねじれウエイト)、バランスポイントを回転軸とする運動の慣性モーメントがリコイルウエイト(recoilweight)です。 下の図はスイングウエイトを示していますが、スイングウエイトは前回すでに説明したので、今回は他の2つの慣性モーメントについて説明しましょう。 ツイストウエイト オフセンターでボールを打った時、衝撃によって手の中でグリップが回ろうとする(だからインパクトの瞬間にグリップを強く握る必要がある)ことは理解できますね。これがツイストウエイトです(あえて訳せば“ねじれウエイト”でしょうか)。真芯で打っても何がしかのツイストウエイトがかかります。 フェースの3時と9時の位置に鉛テープの重りを貼るというカスタマイズを行なえば、ツイストウエイトは大きくなり、オフセンターヒット時のねじれが少なくなり、面安定性が増します。ちなみに、3時9時の2箇所の合計で10g貼るのと、12時の1箇所に10g貼るのとでは、ラケットの重さの変化はどちらも10gですが、ツイストウエイトの増加は前者がより大きく、ピックアップウエイトとスイングウエイトの増加は後者がより大きくなります。 ウイルソンのラケットは3時と9時の位置でフレームが最初から太くなっています。同社ではこれを「P.W.S=周辺加重機構」と呼んでいますが、ツイストウエイトを大きくして面安定性を高めているわけです。 リコイルウエイト リコイルウエイトは、バランスポイントを回転軸とする運動の慣性モーメントです。リコイル(recoil)を辞書で引くと、反動、跳ね返り、後ずさり、たじろぐ、ひるむ、などと書かれています。Recoilless gun(無反動砲)というのもあるようですが、弾を撃ってもしゃくりあげるような動きが生じない火器のことなのでしょう。 一瞬のインパクトのうちに、さまざまな力が作用しあっているんですね。私は高校の物理の授業ではひたすら先生と目を合わさないようにしていましたが、「テニス物理学」という授業だったら、けっこう勉強していたかもしれません。 次回以降、スイートスポットの物理学を経由して、サーブとボレーの打点の使い分けといった実践的トピックに移って行く予定です。 ************************************* こちらもぜひお読みください →3つの重さ――ラケット研究1 →3つのスイートスポット――ラケット研究3
by tennis_passtime
| 2006-09-23 03:36
| ●雑学・技術・科学
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