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お久しぶりです。「横浜テニス研究所」開設と同時に長期休暇をいただき、久しぶりの更新となりました。研究所としての初記事は「ラケットの研究」です(不定期連載)。
コートサイドでの話題の定番はラケットの品定め。自分のラケットと仲間のラケットを持ち替えながら、軽い、重い、飛ぶ、飛ばない、硬い、柔らかい……と飽きもせず同じ話を繰り返すのが週末プレーヤーの楽しみのひとつです。 そんなわけでラケットについて調べてみました。調べていくうちに、いろいろなことが分かりました。自分がいくつか間違った思い込みをしていたことも分かりました。 最悪だったのは、「テニスエルボーには軽いラケットが良い」と誤解していたことです。私は去年の夏からテニスエルボーに悩んでおり、肘への負担を軽くしようとして軽いラケットに変えていた時期がありました。このたび、軽いラケットは肘によくない(!)ことを知りました。知らなかったのは私だけ? 盲腸を熱い風呂に入って治そうとして死にかけた人の話を思い出しました。 重さは、肘への影響だけでなく、ラケットの性能のほとんどを決めるといっても過言ではないぐらい重要です。ということで、まずは「重さ」の話から始めましょう。 ラケットには3つの重さがある 「重さ」とカギ括弧でくくったのは、ラケットには3つの重さがあるからです。 1.ウエイト(Weight)“重さ” 2.ピックアップウエイト(Pickup Weight)“持ち重み” 3.スイングウエイト(Swingweight)“振り重み” ウエイト 「ウエイト」というのは秤で量った重さであり、ラケットバッグに入れて持ち運ぶ時に感じる重さです。私が最近使い始めたバボラのピュア・ドライブは300±7gと表示されています。同じ機種でも上下で14gも違うんですね。 ピックアップウエイト 「ピックアップウエイト」というのは、ラケットのグリップを握って地面と水平に静止状態で保持したときに感じる重さのことです。ヘッドが重力で下に落ちようとするのを止めるために加える力の大きさのことで、次の式で求めることができます。 ピックアップウエイト(g・cm)=(ウエイト×バランスポイント)÷100 バランスポイントというのはラケットの重心のことで、グリップエンドからの距離で示します。ピュア・ドライブは320±7mmと表示されています。 重さ300g、バランスポイント320mmとすると、ピュア・ドライブのピックアップウエイトは96g・cm(=300×32.0÷100)となります(100で割るのは数字を扱いやすくするため)。 これは32cmの棒の先に300gの重りがぶらさがっているというイメージです(棒と紐の重さは無視)。このように、ピックアップウエイトは重さとバランスポイントの兼ね合いで決まるので、秤で量れば軽いラケットのほうが重いラケットよりピックアップウエイトが重いことがあります。 スイングウエイト しかし、ラケットにとって本当に大事な「重さ」は3番目のスイングウエイト、すなわち実際にボールを打つために振ったときの重さです。 スイングウエイトも、ウエイトとバランスバランスポイントが算出の基礎になりますが、それだけで単純に計算することはできません。ピックアップウエイトはバランスポイントの1点に全重量が存在する(300gの重りがぶらさがった32cmの棒)と考えて算出できましたが、スイングウエイトはラケットを構成する全原子のスイングウエイトの総和であり、原子の分布(重さの分布)のありようによって異なるからです。 つまり、重さ300g、バランスポイント32cmのラケットが2本あれば、ピックアップウエイトは同じです。しかし、1本はグリップエンド付近とヘッド先端が重く、もう1本はバランスポイント付近が重いということであれば、スイングウエイトは異なります(やや極端な例ですが)。 スイングウエイトは、ラケット専門店に置いてあるスイングウエイト測定器で測ってもらうことができます(自分で測る方法は次回説明します)。 私は以前使っていたラケットを買うとき、渋谷のアートスポーツでスイングウエイトを測ってもらったことがあります。1本買って気に入ったので2本目を買いに行き、「1本目より気持ち重めの物が欲しい」と言ったら、「スイングウエイトで見なければ意味がないので、1本目を持ってきてください」ということになり、在庫を全部測定器にセットして測ってもらいました(「買うのやめます」と言えなくなりました)。 では、いま使っているピュアドライブのスイングウエイトは……あれ? 表示されていません。3つの重さの中でもいちばん大事な重さが明らかにされていないとは面妖な。ネットでカタログを見ても出ていません。ウイルソンもプリンスもヘッドも調べましたが、やはり出ていませんでした(ただしテニス中間が使っているプリンスのO3を見せてもらったら、ラケット本体にはスイングウエイトが「290」と表示されていました。単位はkg・cm2です)。 重要なスペックが表示されていないのはなぜなんでしょう。ほとんどの人には意味もわからない数値を表示しても、店頭で混乱を招くだけと考えてのことなのでしょうか。あるいは、店頭で測ることにして、「買うのやめます」と言わせなくする作戦? 知っている人がいたら教えてください。 ラケットの重さがプレーに与える影響 スイングウエイトは、軽ければ振りやすいですが、相手の球が速ければ打ち負けます(ショックが大きくて肘にも悪いです)。かといって重過ぎれば振り遅れてしまいます。重いラケットで力強く撥ね返すか、軽いラケットを速く振って対処するかは、好みの問題であり、プレースタイルの問題です。サーブ、リターン、ボレーといったショットによっても重さの持つ意味は違います。そのあたりについては興味深い発見があったので、次回以降、少しずつ紹介していきたいと思います。 ************************************ こちらもぜひお読みください →ラケットを振るときの3つの「重さ」――ラケット研究2 →3つのスイートスポット――ラケット研究3
by tennis_passtime
| 2006-09-21 02:16
| ●雑学・技術・科学
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