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▼前回インナーテニス2に戻る
▼初回インナーテニス1に戻る 無心になる--事実のみに精神を集中させる--ための方法として、コーチは6つの練習方法を教えてくれた。 男は家に帰ってから、コーチに説明してもらったり、実際にコート上で指導してもらったりした練習法を思い出しながら、メモにまとめた。 練習1=タイミング確認法 ・飛んでくるボールの動きをよく見て、ボールがコートにバウンドしたら「ワン」と言い、打つ瞬間に「ツー」と言う。 ・「ワン」でどうする、「ツー」でどうする、といったことは一切何も考えない。ただ「ワン」「ツー」と言うことだけに集中する。 ・空振ろうが、打ったボールがあさっての方へ飛ぼうが、いっさい何も考えない。ただ「ワン」「ツー」と言うことに集中する。 ・この練習により、打ち方をあれこれ指示してくるセルフ1を封じ込めることができ、正しいタイミングで--自分固有のリズムで--打てるようになる。たとえば、「ボールがバウンドするときにはテイクバックを完了しておく」といったことを意識するのは無意味。そういうリズムが合う人もいるし、合わない人もいる。どのタイミングで何をするかは、飛んでくるボールによっても違う。そういう複雑な調整は、スーパーコンピューターのようなセルフ2(無意識)にやってもらうしかない。 練習2=スポットマーク法 ・打った球の落下地点をよく見て、何センチアウトしたか、何センチ入っていたかを10センチ単位で目測する。 ・10センチアウトなら「プラス1」、20センチアウトなら「プラス2」……と言う。ただそれだけ。 ・10センチ内側に入っていたら「1」、20センチ内側に「2」……と言う。ただそれだけ。 ・「プラス」がついたら失敗などと考えない(測定に夢中になって、考えるのを忘れるはず)。 ・こう打ったら「プラス5」だったから、今度はこう打とう、などと一切考えない。そういう複雑なことはセルフ2にやってもらうしかない。 ・打球の深さ(長さ)だけでなく、角度(コース)や軌道(高さ)についても、自分なりの目盛りを設定して、同様の練習を行うことができる。 練習3=ボールペインティング法 ・ボールが飛んでいった軌跡がコート上の3次元空間に描く「絵」(線画)を思う。 ・ボールの運動芸術に没頭するあいだ、セルフ1は不在となり、すべてをセルフ2がやってくれる。 ・ある軌跡を描くには、からだをどう動かすかという複雑な調和作業のためのデータがからだに蓄積される。 ・5回までだったラリーが50回続くようになる。ショットに不安を感じなくなる。テニスが新鮮になる。 練習4=ボールライド法 ・縄跳びの回転にあわせて走り込むように、ラリー中、球を追って、自分の感覚をひょいとボールに飛び乗らせる。 ・風を感じる、打たれて痛いと感じる、インパクト直後は速いが軌道の頂点では遅くなる……というように、ボールを一人称で感じるようになる。 ・テニスで重要なリズムが、外からつかむものとしてではなく、自分自身で作り出すものとしてからだにしみ込む。 ・これまで打ったことのないような、自分でも驚くようなショットが打てるようになる。 練習5=感覚集中法 ・何が悪かったか問われると、「ボールを見ていなかった」とか「フォロースルーが不十分だった」とか、行なうべきだったのに行なわなかったことに言及するプレーヤーが多い。しかし、それは経験しなかったことであり、<事実>ではない。「--しなかった」という認識はセルフ1による推論であり、現実逃避である。 ・「正しい打ち方」(行なうべきこと)は実際に起こっている出来事ではない。すなわち、これも<事実>ではない。 ・意識の一方に「事実ではない正しい打ち方」を置き、もう一方に「事実ではない自分の打ち方」を置いて、ギャップを埋めようと意識しても、ギャップ自体が事実として存在しないので、埋めようがない。10も20もチェックポイントを設けて、足がもつれて歩けなくなったムカデみたいになる。永久に満たされないフラストレーション。 ・正しいスイングを意識するのではなく、「いま自分のからだがどんなふうに動いているか」--これが<事実>--を感じる。その感覚(事実)に意識を集中させる。 ・ボールを打つときに、たとえば「きゅうくつ」「ぎくしゃくする」「力が入らない」「手がしびれる」……といった違和感(事実)を感じたら、goodとかbadとか判断せず、意識して直そうともせず、違和感そのものに感覚を合わせ続ける。からだの声に耳を澄ませる。 ・こうして自分の内側で起こっている事実を感じることで、ミスを自動修正するフィードバック機能がはじめて動き始め、セルフ2によるコーディネーションが可能となる。自分に合った打ち方が身につく。 練習6=呼吸集中法 ・テニスにはポイントとポイントの間に中断がある。意識をボールに集中させる方法では、プレー中断中に集中が途切れる。 ・そこで、常に自分とともにある「呼吸」に意識を集中するという方法が有効である。それによって、セルフ1に仕事をさせなくして、無心の境地に入ることができる。 ・「呼吸に集中する」とは、ゆっくり大きく吸おうと意識したり、呼吸を静め脈拍を整えようと意識することではない。「いま自分はどんな呼吸をしているか」を見つめる。ただそれだけである。セルフ2に呼吸もセルフ2に行なわせること。 男は自分が書いたメモを見ながら、これからテニスをするときはこの練習をやっていこうと決心した。これらの練習は、仲間とふつうのストローク練習やボレー練習をするやときでも、自分のなかで行なうことがきできる。 しばらくたったある日、男はいともやすやすとボレーをしている自分に気づいて驚いた。あれこれ意識していた細かなチェックポイントはいっさい放念し、ただインパクトが<腕に心地よいか>どうかにだけ神経を集中し続けた結果だった。 これだ、コーチが言っていたその時が来たんだ!と思わず心の中で叫んでいた。 ボレーが上達したことを報告し、お礼を言うために、男はふたたびコーチのもとを訪ねた。 コーチは我が事のように喜んでくれたばかりか、独自のテニス理論のさらに続きを教えてくれた。その教えは、男のテニス観を変えただけでなく、おおげさに言えば人生を変えるほど大きなインパクトがあった。 注:上記の練習法はティモシー・ガルウェイ著『インナーテニス』に紹介されているが、練習方法の名前はこの記事上で独自のものに変更している。 to be continued
by tennis_passtime
| 2006-06-09 07:43
| ●雑学・技術・科学
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