カテゴリ
記事ランキング
最近読んだ本
おすすめリンク
以前の記事
検索
その他のジャンル
|
▼放課後のテニス[テニス少年1]はこちら
テニス部の初練習に参加するため、健太は体操服を袋に入れて登校した。 昨日、テニスをしたい者は校庭に集まれと先生が言った。たいして期待していたわけではなかったが、やってみるとなかなか面白かった。先生に指名され、みんなが見守るなかで相手役までやらされたが、そこそこ器用にこなすこともできた。 健太は中学に入るのを楽しみにしていた。英語の授業があること、科目ごとに先生が変わること、そしてクラブ活動があることが理由だった。どれも自分を大人に一歩近づかせてくれる変化のような気がしていた。 なかでもクラブ活動には期待していた。毎日、自分で選んだ好きな遊びができるのだから、面白くないわけがない。 ところが、健太が入った中学には、野球部、卓球部、柔道部、体操部、吹奏楽部しかなかった。野球部は先輩が恐そうに見えたし、入部するのは1年生のなかでもわけのわからない乱暴者ばかりだった。卓球部と柔道部は暗くて油臭い講堂の雰囲気が好きになれなかったし、体操部は逆上がりも後転もできない健太には論外だった。吹奏楽部は女のクラブで、もっと論外だった。 入りたいクラブが見当たらなくて困っていたので、先生がテニス部をつくると宣言したとき、健太は即座に入部しようと決めたのだった。 校庭に、昨日の初打ちを体験した生徒のおよそ半分、20人ほどが集まった。 しばらくすると先生が校舎から出てきた。校舎は校庭より高いところにあるので、コンクリートの坂道を下りてくることになる。先生は爪先をトントンと地面に打ち付けて靴を履きながら、入部志願の1年生たちに近づいてきた。 「あれ、ラケットとボールは?」 と、誰かが言った。なるほど、そこには昨日の竹カゴはなかった。 生徒たちの前に立った教師は、「ついてきなさい」と一言いうと、校庭の端にある道具置場へと歩いていった。そして扉を開けると、ツルハシ、スコップ、バケツ、一輪車などを、次々に生徒に割り振った。 「え~、何これ?」 「先生、何するん?」 「テニス部の練習とちがうん?」 怪訝なまなざしを先生は当然の面持ちで受けとめると、ニヤリと笑って言った。 「決まっとるがな。コートを作るんや」 そういえば、健太の中学校にはテニスコートがなかった。テニスコートがどんなものか知っていたわけではないが、平らな地面の上でボールを弾ませて行なうスポーツだとしたら、学校にはそんな場所は無かった。唯一平らな場所は校庭だが、昨日と違い、そこは野球部が占領していた。「えー、そんなあ……」 「うそー、だまされた……」 当然至極なブーイングを浴びながら、先生は楽しくてたまらないという表情で生徒ひとりずつを見渡した。 先生と目が合ったとき、健太は「面白いことになりそうやな」と思った。 ▼テニス少年3に続く
by tennis_passtime
| 2006-05-28 19:05
| ●連載ミニ小説
|
ファン申請 |
||