カテゴリ
記事ランキング
最近読んだ本
おすすめリンク
以前の記事
検索
その他のジャンル
|
![]() 私の話ではなく、クーリエの話でした。 強烈な逆クロスのフォア、野球みたいなハンマーグリップの両手バックハンドをご記憶の方も多いでしょう。絶頂期を過ぎてからも、すべてのショットをひたすらフルパワーで打ち続けていました。メディアからは、プレーもキャラも面白みに欠けると言われたことがあるようですが、私の中ではナンバー・ワンです。 プレーもさることながら、ハートが素晴らしかった。ひとつ印象的なエピソードを紹介しましょう。 3連覇のかかった1993年のフレンチオープンの決勝戦。クーリエはセルジ・ブルゲラに4-6、6-2、2-6、6-3、3-6のフルセットで敗れました。激しい打ち合いを制したスペインの新星は、歓喜のあまりコートに身を投げ出して大の字になりました。 テレビカメラが勝者をアップで捉え、私の思いは画面から消えた敗者の無念さに向かいました。その時です、テレビ画面の端から誰かの手が現れ、ブルゲラに差し伸べられたのです。クーリエでした。クーリエはブルゲラの手を取って立ち上がらせると、汗と赤土にまみれた勝者をしっかりと抱擁したのでした。 敗者がネットを飛び越えて勝者に駆け寄り、そして祝福したのです。誰でもネット越しの握手ぐらいはしますが、相手がコートの向こうで寝転んでしまったら、ベンチに戻るしかないでしょう。それなのに、クーリエの行為のなんとさわやかなこと。私が女だったら、断然クーリエと結婚したいと思うでしょう。 クーリエの現役時代のコメントをいくつか紹介します。 試合が終わったプレーヤーが誇りを持ってコートから立ち去る。 彼は勝っても負けても同じ誇りを持ってふるまう。 だから観衆は彼が勝ったのか負けたのか分からない。 私にとって、スポーツとはそういうものだ。 試合の結果によって自尊心を保とうとすることは危険だ。 自分が才能に乏しいと言われているのは知っている。 しかし、ボールを上手に打つことだけが才能じゃない。 コート上でガッツを失わないのも才能、強く願い続けるのも才能、 0−40で強く打ち抜くことだって才能だ。 友人のK田N正君は現役時代のクーリエを生で見たことがあるそうです。「目いっぱい力を入れて強打するイメージがあるでしょ? 全然違うんですよ。ものすごく柔らかいんです。びっくり しました」。信じ難い気もするけれど、プロのレベルはそういうものかもしれないという気もします。ぜひ、この目で見たかった。 ジム・クーリエ(Jim Courier) 1970年、アメリカ生まれ。全仏2回、全豪2回制覇。1992−93年、58週連続で世界ランクNo.1。2000年に引退、2005年にテニス殿堂入り。現在は解説やシニアツアーで活躍。
by tennis_passtime
| 2006-05-26 01:35
| ●プロテニス
|
ファン申請 |
||