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入学間もない中学1年生の教室。2時間目の数学の授業が終わったあと、教師が言った。「テニスをやりたい人は、今日の放課後、校庭に集まりなさい」 教室のあちこちから声があがった。 「テニスってなに?」 「ラケット貸してくれるん?」 「水たまりあるで」 なにしろ田舎中学のこと、テニスなど知らない生徒が大半だったが、放課後には、好奇心にかられた40人ほどの1年生が集まった。1年生の3人に1人が集まったことになる。教師は各クラスで呼びかけたらしい。 朝、雨が降っていたこともあり、生徒の多くは長靴を履いていた。男子は詰襟、女子はセーラー服。水たまりはひいていたが、グラウンドは柔らかかった。そのせいなのか、いつもなら狭いグラウンドを我が物顔で占拠している野球部の姿はなかった。 校舎の玄関から、竹で編んだ大きなカゴを抱えて教師が出てきた。そんなものがどこにあったのか、20本近いラケットと数ダースのボールが入っていた。もちろん軟式テニス用である。 カゴがグラウンドに置かれると、生徒たちはわっと群がり、われ先にラケットとボールをつかむと、てんでに打ち合いを始めた。距離も方向も定まらないボールは入り乱れ、放課後のグラウンドに歓声があがった。 そのうち、誰かが「先生もやってえな」と言った。 教師は「よっしゃ、よう見ときよ」と応じ、そばにいた生徒のラケットとボールを手に取ると、ひとりの男子生徒を指さしてからボールを送り出した。 はじめは散らばっていた生徒からの返球もまとまりだし、ポーン、ポーンと打ち合いが続いた。 「先生、うまいやん」 「あたりまえや」 模範演技のあと、生徒たちはふたたび自由に打ち合った。 物珍しさからくる興奮もそろそろ薄れてきたころ、教師は終了を告げ、生徒たちにラケットとボールを片づけさせた。そして、授業のあとに呼びかけたときより少し大きな声で言った。 「テニス部をつくります。明日から始めるので、入りたい人は、体操服を着て、グラウンドに集まるように」 ▼テニス少年2に続く
by tennis_passtime
| 2006-05-21 03:37
| ●連載ミニ小説
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