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パーフェクトマイル
ニール・バスコム著 松本剛史訳 ソニー・マガジンズ刊 2004年7月30日発行 定価:本体1800円+税 人類初の1マイル(1609.344メートル)4分切りを目指した3人のランナー——ロジャー・バニスター(イギリス)、ジョン・ランディ(オーストラリア)、ウェス・サンティー(アメリカ)——の挑戦をたどった読み応えのあるスポーツ・ノンフィクションです。 時代は1950年代前半。当時、人間が1マイル4分の壁を破ることは不可能と言われていました。人体の生理やトレーニングについての理解も今のようには進んでおらず、激しい練習は寿命を縮めるとさえ考えられていました。シューズやトラックの性能も今より格段に劣っています。アマチュアリズムの時代ですから、ただ走っていればよいわけでもありません。 そんななか、国も、生まれた境遇も、性格も、競技環境も異なる3人は、ただ名誉のために過酷な努力を続け、激しくしのぎを削ります。私は3人それぞれにすっかり感情移入してしまい、誰にも負けてほしくないと思いながら、誰が勝つのかわからずハラハラしながら読み進みました。 この本はミステリーではないし、結果は歴史的事実なので、書いてしまいますが、最初に4分を切ったのはロジャー・バニスター、時は1954年5月6日、タイムは3分59秒4でした。 でもご安心を。この本はそこで終わるわけではありません。2ヵ月後に、ジョン・ランディがそれを上回る3分58秒0という記録を出したのです。世界の注目は、こんどは2人の直接対決へと移ります。先に4分切りを果たしたバニスターの不安と焦燥、2人の対決を解説席で見守ることになったサンティーの悲哀……本書はクライマックスに向けてラストスパートしていきます。 スポーツのシーンを文字にしたすぐれた作品は多数ありますが、本書に描かれた数々のシーン、とくにバニスターの4分切りレースと、バニスターとランディの直接対決の2レースは、読み終わると、呼吸が乱れ、脚が筋肉痛になります。読み応えのある本でした。 ■人類で初めて1マイル4分を切ったバニスターのレース ■1マイル4分切りを果たした2人、バニスターとランディの直接対決 ——————————————————————————————————————————— バニスターが4分切りを果たすと、それから1年以内に4分以内で走る選手が23人も現れており、それはスポーツにおける心理的バリアの持つ意味を物語る好例となっています。 現在の1マイルの世界記録は、1999年にモロッコのヒシャム・エルゲルージが出した3分43秒13。すでに10年以上経っていますが、この記録を人類の限界だと主張する人はいません。 陸上競技の記録ということなら、私の目下の最大の関心は、いつ誰がマラソンで2時間を切るかです。そうなったら世界的大ニュースでしょうが、この本を読むと、バニスターの1マイル4分切りもそれと同じぐらいの衝撃であったことがわかります。 ●ご用とお急ぎでない方はワンクリックをお願いします。 ●もっとご用とお急ぎでない方は▶所長の読書ブログもご笑覧ください
by tennis_passtime
| 2011-04-03 11:52
| ●読書ノート
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