カテゴリ
記事ランキング
最近読んだ本
おすすめリンク
以前の記事
検索
その他のジャンル
|
もういちど豊原きこう著『水原勇気1勝3敗12S』(講談社文庫)から。こんどは「アストロ球団」ではなく、星飛雄馬が活躍する「巨人の星」です。私と同世代の人なら、1球投げるのにゴールデンタイムの30分を要する濃密な内面描写に辟易とし、「早よ投げんかい!」とツッコミを入れた記憶があるでしょう。
なかなか投げなかった星飛雄馬の通算成績は下記の通りです。 1968〜70(左投) 37試合 27勝3敗3セーブ 防御率0.34 勝率.900 1976〜78(右投) 29試合 20勝2敗0セーブ 防御率0.97 勝率.909 通算 66試合 47勝5敗3セーブ 防御率0.63 勝率.904 でも、いま紹介したいのは記録ではなく、「星一徹はソン・チョンイルか」と題した、文庫本12ページにわたる考察です。 星飛雄馬は1967年に青雲高校の1年生エースとしてチームを夏の甲子園準優勝に導いた。将来を嘱望されたが、暴力沙汰を起こした相棒の捕手、伴宙太をかばい中退した。プロ球団間で争奪戦が始まるが、父の一徹が巨人を逆指名。ドラフトを回避するために新人公募テストを受け、飛雄馬は合格する。 こうして著者は、星飛雄馬が外国籍であったことを示す強固な状況証拠を提示したうえで、あきらかに東洋系であることや、星親子の境遇や性格から推して、韓国籍であったのではないかと推測します。 星親子のエキセントリックなほど熱血的で感情の起伏の激しい性格、その誇り高さ、逆境における強靭な忍耐力からそう判断するのは差別、偏見につながるだろうか。(118-19ページ) 「巨人の星」の原作者・梶原一騎は自らの作中で飛雄馬らに向けてエールを送っています。こんな詩です。 みんなが青春を! いま改めて読むと、魔球開発の野球マンガにはいささか場違いな「差別」という言葉に目がとまります。いつも忍耐の歯ぎしりが聞こえてくるような重苦しいストーリーであったことも思い出されます。著者は、星一徹がソン・チョンイルであったというのは妄想の類いかも知れない、と謙虚に留保していますが、ほとんど疑う余地はなさそうです。少なくとも私には、ストンと腑に落ちました。 追記:上記で触れられませんでしたが、コラムには興味深い指摘が3点ありました。 (1)韓国の姓氏は約260あるといわれる。珍しいが「星」という姓もある。 (2)韓国語には日本語の「まいった」に当たる言葉がない。 (3)韓国の人々の心を説明する「恨(ハン)」という言葉があるが、 これは日本語の「恨み」や「怨み」とは意味がまったく異なり、他者ではなく、自らの内面に深く向けられ留まる「遂げられない無念や嘆き」である。英語の「フラストレーション」に似ているが、自滅しかねないほどの強い感情である点で異なる。韓国人は「恨」を晴らすためにあらゆる努力を惜しまない。 ●ご用とお急ぎでない方はワンクリックをお願いします。
by tennis_passtime
| 2010-03-07 14:36
| ●読書ノート
|
ファン申請 |
||