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- 必殺の一撃[ 2009-05-24 12:31 ]
- 真実が人を動かす[ 2008-12-22 23:02 ]
- クロアチア美女とロシア熊男[ 2008-10-18 12:31 ]
- キップリングの「If」……フェデラーとナダルによる朗読[ 2008-07-11 01:33 ]
- Don't Run Alone……父と息子の絆[ 2008-02-09 10:22 ]
- 静かな諦観と執拗な継続[ 2007-12-02 00:39 ]
- 北京で発見!中国テニスの強さの秘密[ 2007-09-04 21:22 ]
- ミドルサンデーの奇跡[ 2007-07-11 22:07 ]
- 三ツ沢4番コートの奇跡[ 2007-02-25 10:32 ]
東京のどまんなかに混浴銭湯があるなんて!
こんな記事、公序良俗に反するかもしれませんが、書かずにいられません。タイトルもスパムメールみたいになりましたが、これも仕方ありません。素直な気持ちですから。私の驚きの話を聞いてください。
先日のことです。仕事に空き時間というか、ぽっかり長い待ち時間が生じたので、東京マラソンも近いことだし、からだをほぐすのもいいと思い、たまたま見かけた銭湯に飛び込みました。
番台が中に入ったところにあったので、「あれ、このごろの番台は外にあると思ってたけど、ここは違うんだ。昔は、ここに座るのが男一生の夢なんて言ってたけど」なんて考えながら、ふと気づくと……胸をはだけた若い女性が目の前にいるではないですか。それも複数。まずい、女湯だ!
あわてて逃げて出ようとしたら、あれ、涼しい顔で男性客も入って来ました。さっきの女性は実は男? それともこの男が実は女? 落ち着いて観察すると、そこには男も女もいて、風呂上がりにくつろいでいます。え〜っ、混浴。銭湯で。東京で。脱衣室もいっしょ。ホンマかいな。
動悸をおさえ、震える手で料金を払ったら、ロッカーの鍵を渡されました。銭湯なんて、空いてるロッカーを使えばいいんじゃなかったっけ、と思いながら、指定された場所に向かいました。ところが、あせっているせいでしょうか、金縛りにあったようにからだが動かず、なかなか前に進めません。
汗をかきかき、やっとの思いでたどりついたら、なんと、私に与えられたロッカーの前には大きなソファーがあって、扉をふさいでいます。どかさなければ使うことができません。仕事の空き時間にも限りがあります。だんだん焦ってきました。さらに汗をかきかき、やっとの思いでソファーをどかすことができました。こんな重いソファーは初めてです。
さあ、いよいよ夢の混浴湯船に突撃です。服を脱いで湯船に向かったら、ガラス戸に「水着着用のこと」の注意書きが。え〜っ、そんなこと番台では全然言われなかったのに、あそこじゃみんな裸だったじゃん、と不満に思いましたが、中を見ると、みんな確かに水着を着用しています。それなのに私だけスッポンポン。
あわてて引き返し、ロッカーを開けて服を着ようとしたら、さっき動かしたはずのソファーが。え〜っ、またかよ。なんでだよ。前を片手で隠し、残る片手で重いソファーと果てしない格闘をしているときに、ハッと気づきました。
ぜんぶ夢でした。
そりゃそうだよな。ヨーロッパあたりにはあるかもしれないけど、脱衣場でコーヒー牛乳を売っているような東京の銭湯に混浴なんかあるはずないし。夢と気づかず湯船に飛び込んでいたら、おねしょで布団がぐっしょりだったのかなあ。やれやれ。まあ、東京マラソンをがんばろう……と気を取り直したときに、またハッと気づきました。
東京マラソンも夢でした。
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先日のことです。仕事に空き時間というか、ぽっかり長い待ち時間が生じたので、東京マラソンも近いことだし、からだをほぐすのもいいと思い、たまたま見かけた銭湯に飛び込みました。
番台が中に入ったところにあったので、「あれ、このごろの番台は外にあると思ってたけど、ここは違うんだ。昔は、ここに座るのが男一生の夢なんて言ってたけど」なんて考えながら、ふと気づくと……胸をはだけた若い女性が目の前にいるではないですか。それも複数。まずい、女湯だ!
あわてて逃げて出ようとしたら、あれ、涼しい顔で男性客も入って来ました。さっきの女性は実は男? それともこの男が実は女? 落ち着いて観察すると、そこには男も女もいて、風呂上がりにくつろいでいます。え〜っ、混浴。銭湯で。東京で。脱衣室もいっしょ。ホンマかいな。
動悸をおさえ、震える手で料金を払ったら、ロッカーの鍵を渡されました。銭湯なんて、空いてるロッカーを使えばいいんじゃなかったっけ、と思いながら、指定された場所に向かいました。ところが、あせっているせいでしょうか、金縛りにあったようにからだが動かず、なかなか前に進めません。
汗をかきかき、やっとの思いでたどりついたら、なんと、私に与えられたロッカーの前には大きなソファーがあって、扉をふさいでいます。どかさなければ使うことができません。仕事の空き時間にも限りがあります。だんだん焦ってきました。さらに汗をかきかき、やっとの思いでソファーをどかすことができました。こんな重いソファーは初めてです。
さあ、いよいよ夢の混浴湯船に突撃です。服を脱いで湯船に向かったら、ガラス戸に「水着着用のこと」の注意書きが。え〜っ、そんなこと番台では全然言われなかったのに、あそこじゃみんな裸だったじゃん、と不満に思いましたが、中を見ると、みんな確かに水着を着用しています。それなのに私だけスッポンポン。
あわてて引き返し、ロッカーを開けて服を着ようとしたら、さっき動かしたはずのソファーが。え〜っ、またかよ。なんでだよ。前を片手で隠し、残る片手で重いソファーと果てしない格闘をしているときに、ハッと気づきました。
ぜんぶ夢でした。
そりゃそうだよな。ヨーロッパあたりにはあるかもしれないけど、脱衣場でコーヒー牛乳を売っているような東京の銭湯に混浴なんかあるはずないし。夢と気づかず湯船に飛び込んでいたら、おねしょで布団がぐっしょりだったのかなあ。やれやれ。まあ、東京マラソンをがんばろう……と気を取り直したときに、またハッと気づきました。
東京マラソンも夢でした。
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必殺の一撃
フェデラーはラケットの先に構えているナダルを凝視した。ナダルの青眼の構えは堅牢無比で、一分の隙も見出せなかった。それでいて足のくばり腕のそなえは、やわらかく無限の弾力を秘めているように見え、機に応じて攻防いずれにも変化する動きを隠していることがあきらかだった。
――攻撃あるのみ。
とフェデラーは思った。ナダルはフェデラーの仕掛けを待って攻防の変化に出ようとしているように思われた。フェデラーが仕掛けなければそれでもよし、膠着状態に持ち込んで、一瞬の仕掛けに嵌める。ナダルの構えはそう言っているようでもある。
フェデラーは左足をじりりと前にすすめると、静かにラケットを八双に引き上げた。それで敵の攻撃を左半身に吸収しながら、必殺の一撃を放つ攻撃の態勢が出来上がったのである。
フェデラーvsナダル、先日のマドリード決戦の一瞬を描いてみました。なかなかの名文だと思いませんか……ごめんなさい、ウソです、私が書いたんじゃありません。これは藤沢周平の『蝉しぐれ』に描かれた、牧文四郎と興津新之丞の奉納試合の場面なのです(文春文庫版262ページ)。文中の「文四郎」を「フェデラー」に、「興津」を「ナダル」に、そして「竹刀」を「ラケット」に置き換えたら、あら不思議、神社の境内からスペインのクレーコートにワープしてしまいました。
藤沢ファンからのお叱りを覚悟で、もう一箇所(265ページ)、同様の引用(?)をさせてください。フェデラーとナダルの戦いの構図そのものが書かれていることに驚きます。
ナダルが見せた変化は隙ではない。だが鉄壁の守りの中に生じた、髪の毛ほどの間隙ではあった。フェデラーの打ちこみは、その間隙をひろげようとしたものだった。不思議なことだが、ナダルの守勢はフェデラーを圧迫した。そのままに推移すれば、ナダルの術中にはまるという不安感をあたえるものだった。その粘っこい守りの型を破るためにも、機を見て打ち込むことが必要だったのである。
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真実が人を動かす


年の瀬の解雇ニュースには胸が痛みます。とくに派遣社員に対する大手企業の非人道的な扱いには怒りを禁じ得ません。アメリカ型グローバル経済、株主至上主義経営、金融工学マネーゲームが、行き着くべきところに行き着きました。
この手のニュースに接するたびに、ケン・アイバーソン著『真実が人を動かす』(ダイヤモンド社、1998年)に書かれている一節を思い出します。
今日の職務を適切に果たしさえすれば
明日もまた自分に仕事があることを、
従業員は確信できなくてはならない。(p.23)
著者のケン・アイバーソン(1925-2002)はニューコア(Nucor)という鉄鋼メーカーの会長です(出版当時)。1965年に倒産の危機に瀕した同社の社長に就任し、再建を果たしました。80年代前半、アメリカを襲った鉄鋼冬の時代を、レイオフなし、工場閉鎖なしで乗り切ったことで知られる経営者です。
『真実が人を動かす』は理屈っぽいところのない平易な筆致で書かれていて、誠実で温かい著者の人柄が感じられる本です(版元品切れなのが残念)。披露されているニューコアのマネジメントの原則をいくつか書き出すと、トップと従業員のあいだに無意味な区別をつけない(社員食堂、駐車場、ゴルフコースなど)、成果も痛みも全員で分かち合う、痛みはまず上に立つ者から引き受ける、人種差別を憎む、不正による利得は断固拒否する、チームワークを重視する、給与は査定によってではなく生産に応じて客観的に決める、マネジメントの階層を少なく保つ、イノベーションを重視し失敗を許容する……こうした原則が、だれもが我が事のように共感できる数々のエピソードとともに語られています。
目先のことだけ考える企業経営でよいのか?
雇用崩壊の風潮のいま読み返すと、次のような箇所はとくに深い意味があることに気づかされます。
短期的な慮りではなく、自社の長期的存続に関心を集中するなら、事業のあらゆる面で変化が生じる。短期と長期では優先すべき物事が根本的に異なるからだ。なかでも大きいのは、経営陣がその折々のプレッシャーのみにかまけて意思決定を下すという傾向を予防できることである。(p.21)
ほとんどの従業員の雇用は不安定だ。その短期的な利益など、株主や経営トップのそれより、はるかに後回しにされている。従業員の短期的利益が株主や経営トップの利益と対立でもしようものなら、従業員は職を失う。これまでどんなに一生懸命働いてきたとしても(そして、先々会社が彼らをふたたび必要とするかもしれないとしても)、おかまいなしだ。(p.24)
経営者は会社のために最善を尽くすべくその地位についている。経営者だからといって、特別扱いされる必要はないし、そうされる価値があるわけでもない。経営者が従業員より重要なわけでもない。従業員より仕事ができるということですらない。ただ、する仕事が違っているだけのことだ。(p.25)
人間尊重の経営の結果は?
10年前の本なので、当然、いまニューコアがどうなっているのかが気になりました。解雇はしなかったけれど、会社がつぶれて全員路頭に迷いましたでは話になりません。鉄鋼業界に詳しいH氏に尋ねたら、さっそく詳しいニューコア最新情報が届きました(以下は見出しのみ)。
(1) ニューコアはいまや北米鉄鋼ビッグ3のひとつ
(2) この10年間に粗鋼生産能力で2倍、売上げで4倍の成長
(3) 国内で足固めして世界進出を狙っている
(4) 高炉建設の計画まである(注:同社はスクラップを原料とする電炉鉄鋼メーカー)
(5) ニューコア出身者は米鉄鋼の一大人脈を形成
つぶれていないどころの話ではありません。堂々たる成長企業です。それを知って次に気になったのは、当然、熱血経営者アイバーソン亡きあともニューコアはレイオフをしていないのだろうか、ということです。会社は成長したけれど、従業員のクビは切りまくりましたでは、やはり話になりません。これもH氏にたずねたら、ニューコアが自社サイトで明記している一文を教えてくれました。
当社は、鉄鋼生産に参入した当初から今日に至るまで、
仕事がないという理由では、ただの1人も解雇していません。
その結果が、献身的な従業員と高度な品質です。
実際、鉄鋼業界の記事データベースでも、ニューコアがリストラしたというニュースは発見できなかったそうです。H氏からのメールはどこか嬉しげで、「アイバーソンの時代から、どうも何も変えていないようですね。このへんがむしろ成長の秘密でしょうか」とありました。
写真はNucorのサイトのOur Storiesというコーナーから。Nucorの仕事は、袖をまくりあげ、手を汚して行なう類の仕事であり、それを担う工場労働者こそが会社存続の基礎だと語っています。
テニスに関係のない話は書かないようにしていましたが、禁を破りました。何事についても固いことは言わない、というのが私の固い信念です。
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クロアチア美女とロシア熊男
しばらく更新をサボってすみませんでした。出張でドイツのフランクフルトに来ています。パソコンを持参したので、家にいるときと同じように更新しようと思っていましたが、甘かったみたいです。そんな元気ありません。ヘロヘロです。何が疲れるかと言って、相手が何を言っているのかわからないのに、わかったような顔でうなずくのが疲れます(涙)。
そんな私でも、なんとか元気を出してしゃべれる話題があります。もちろんテニス方面です。昨晩、10数人でタイ料理を囲んだのですが、私の隣りに座ったのがクロアチアからやってきた美女。「オー、クロアチア。グレート・カントリー。アイ・ノウ・クロアチア。イワニセビッチ。カルロビッチ。アンチッチ。チリッチ。ルビチッチ」。これだけで美女のハートをワシづかみです。
美女が目を輝かせて話したことを私なりに推理すると、(1)クロアチアは背の高い国である、(2)イワニセビッチではなくてイヴァニィーシェヴィッチである、(3)イヴァニィーシェヴィッチのウィンブルドン優勝は歴史的勝利であった、(4)あなたはクロアチアのことをよく知っているしハンサムなので、クロアチアに来たら女性が放っておかないと思う、とまあこんなところだったと思います。
夕食がおわりました。私がもう20歳若く、もう20cm背が高ければ、クロアチア美女にアタックしたと思うのですが……もちろんそうはなりませんでした。で、ホテルへの帰路の友は、なんとロシアの熊男でした(涙)。しかたがないので、さっきの国際友好会話をもういちど。「オー、ロシア。グレート・カントリー。シャラポワ、デメンティエワ、クズネツォワ、ズボナレワ、ペトロワ」。
熊男のハートはクマなのでワシづかみにはできませんでしたが、テニス話がはずみました。熊男はロシアの出版社に勤めているのですが、なんと彼の会社は、テニスの2大名著(と私が勝手に思っている)、『インナー・ゲーム』と『ウィニング・アグリー』を出版しているのだそうです。熊男がすごいのはウォッカの飲みっぷりだけじゃないことがわかりました。
以上、テニス研究所@フランクフルトからの更新でした。
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そんな私でも、なんとか元気を出してしゃべれる話題があります。もちろんテニス方面です。昨晩、10数人でタイ料理を囲んだのですが、私の隣りに座ったのがクロアチアからやってきた美女。「オー、クロアチア。グレート・カントリー。アイ・ノウ・クロアチア。イワニセビッチ。カルロビッチ。アンチッチ。チリッチ。ルビチッチ」。これだけで美女のハートをワシづかみです。
美女が目を輝かせて話したことを私なりに推理すると、(1)クロアチアは背の高い国である、(2)イワニセビッチではなくてイヴァニィーシェヴィッチである、(3)イヴァニィーシェヴィッチのウィンブルドン優勝は歴史的勝利であった、(4)あなたはクロアチアのことをよく知っているしハンサムなので、クロアチアに来たら女性が放っておかないと思う、とまあこんなところだったと思います。
夕食がおわりました。私がもう20歳若く、もう20cm背が高ければ、クロアチア美女にアタックしたと思うのですが……もちろんそうはなりませんでした。で、ホテルへの帰路の友は、なんとロシアの熊男でした(涙)。しかたがないので、さっきの国際友好会話をもういちど。「オー、ロシア。グレート・カントリー。シャラポワ、デメンティエワ、クズネツォワ、ズボナレワ、ペトロワ」。
熊男のハートはクマなのでワシづかみにはできませんでしたが、テニス話がはずみました。熊男はロシアの出版社に勤めているのですが、なんと彼の会社は、テニスの2大名著(と私が勝手に思っている)、『インナー・ゲーム』と『ウィニング・アグリー』を出版しているのだそうです。熊男がすごいのはウォッカの飲みっぷりだけじゃないことがわかりました。
以上、テニス研究所@フランクフルトからの更新でした。
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キップリングの「If」……フェデラーとナダルによる朗読
ウィンブルドン。緊張の面持ちでセンター・コートに向かう選手が開く扉の上に、英国の詩人キップリングの「If」という詩の一節が掲げられています。
英国BBCは決勝戦の放送の冒頭で、フェデラーとナダルのスローモーションプレーの上に、2人がこの詩を朗読する表情を重ねました。マッケンローをして「鳥肌がたった」と言わしめた素晴らしい映像を、うれしいことに日本でもYouTubeで見ることができます。激しい戦いの前に、2人はどんな思いでこの詩を朗読したのでしょうか。ぜひ、こちらをクリックしてください。音楽も深みがあり、胸が締めつけられるように熱くなります。
ジョセフ・ラドヤード・キップリング(Joseph Rudyard Kipling, 1865-1936)=英国を代表する作家、児童文学者、詩人。『ジャングル・ブック』『少年キム』などの作品がある。"East is East, West is West"(東は東、西は西)という言葉でも知られる。1907年に41歳の若さでノーベル文学賞を受賞。原詩はこちら。
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"If you can meet with triumph and disaster
And treat those two imposters just the same"
勝利も敗北も等しく受けとめて
惑わされることがないなら……
英国BBCは決勝戦の放送の冒頭で、フェデラーとナダルのスローモーションプレーの上に、2人がこの詩を朗読する表情を重ねました。マッケンローをして「鳥肌がたった」と言わしめた素晴らしい映像を、うれしいことに日本でもYouTubeで見ることができます。激しい戦いの前に、2人はどんな思いでこの詩を朗読したのでしょうか。ぜひ、こちらをクリックしてください。音楽も深みがあり、胸が締めつけられるように熱くなります。
もし……
もし、ゆえなき非難にさらされても
心を騒がせず
疑われても自分を疑わず
疑う者を赦せるなら、
もし、倦むことなく待ち
嘘に嘘を返さず
憎しみに憎しみを返さず
空しく装って賢しらな口を利かぬなら、
もし、夢を見ても夢に縛られず、
考えても思念に終わらせず、
勝利も敗北も等しく受けとめて
惑わされることがないなら、
もし、まことを込めた言葉を悪者が捻じ曲げ
愚者を罠にかけるのを見ても耐え
人生を賭けて求めたものが壊されても
使い古した道具で作り直せるなら、
もし、勝ち取ったすべてをかき集めて
コイン・トスに賭けるリスクを引き受け
負けても最初からやり直し
嘆きの言葉を口にしないなら、
もし、心も神経も肉体もとうに疲れ果てても
自らを叩いて為すべきことを為し
持てるすべてを使い果たしても
「耐えよ」と叫ぶ意志のみで耐えるなら、
もし、群集に説きながら徳を失わず
王と居て民の心を忘れず
敵にも友にも傷つけられることなく
人を大切にしても大切にしすぎないなら、
もし、仮借なきこの一刻を
全力の一瞬一瞬で満たすなら
息子よ、地と地の上のすべてはおまえのもの
おまえは栄えある勝者となる
(横浜テニス研究所私訳)
ジョセフ・ラドヤード・キップリング(Joseph Rudyard Kipling, 1865-1936)=英国を代表する作家、児童文学者、詩人。『ジャングル・ブック』『少年キム』などの作品がある。"East is East, West is West"(東は東、西は西)という言葉でも知られる。1907年に41歳の若さでノーベル文学賞を受賞。原詩はこちら。
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Don't Run Alone……父と息子の絆
You Tubeに投稿された、ある父子の映像クリップを紹介します。障害を持って生まれた男の子と父親の人生の記録です(所要時間4分)。
父の名はディック
息子の名はリック
出産のときの悲しい事故のため、リックは歩くことも話すこともできない
出産のときの悲しい事故のため、ディックは息子とキャッチボールができない
出産のとき悲しい事故があったけれど、二人は世界に勇気を与える
父デイックと母ジュディは息子に普通の人生を望み
リックを公立学校に入れた
リックは特別なコンピュータで、自分の考えを書く方法を学んだ
リックは15歳のとき、5マイルのチャリティ・ランに出たいと父に伝えた
ディックはランナーではなかったが、リックを車いすに乗せて走った
リックはそのとき、人生で初めて、肢体の不自由を感じなかった
だから二人はいっしょに走った
二人はいっしょにマラソンを走った
二人はいっしょにトライアスロンを走った
二人はいっしょにアメリカ横断の3,770マイルを走り切った
父がいなければリックは走れなかった
息子がいなければディックは走らなかった
デイックがボディ
リックがハート
二人だから走る
二人だからパワーが出る
一人では決して走らない
静かな諦観と執拗な継続

村上春樹の『走ることについて語るときに僕の語ること』を読みました。私より年上なのに、フルマラソンを3時間台で走る、贅肉はない、髪はある、という許し難い人物の本です(笑)。
村上春樹は作家活動が本格化した33歳のとき、健康維持のために走り始めました。最初は20分か30分走るのが精一杯だったようですが、以来25年、毎年1回のペースでフルマラソンを走り続けています。トライアスロンも100kmマラソンも完走し、いまや筋金入りのランナーです。
5時間の壁が破れないジョガーの私ですが、この人のように毎日走り続ければ、4時間を切ってランナーの仲間入りができるかもしれないという気になりました。乗せられやすい私は、読後、一気に6大会(長短とりまぜて来年1月~3月)にエントリーしてしまいました。
フルマラソンを完走するためのノウハウ(特にコンディショニング面)も学べますが、もちろんただのランニング日記ではありません。走ること、生きること、書くことについての省察の書で、人生を走り続けるためのヒントがあちこちに散りばめられています。いくつか抜き書きしてみます。
●走ること
僕は走りながら、ただ走っている。僕は原則的には空白の中を走っている。逆の言い方をすれば、空白を獲得するために走っている、ということかもしれない。(p.32)
筋肉は覚えの良い使役動物に似ている。注意深く段階的に負荷をかけていけば、筋肉はそれに耐えられるように自然に適応していく。(p.100)
●継続と集中
継続すること――リズムを断ち切らないこと。長期的な作業にとってはそれが重要だ。(中略)弾み車が一定の速度で確実に回り始めるまでは、継続についてどんなに気をつかっても気をつかいすぎることはない。(p.16)
本当に若い時期を別にすれば、人生にはどうしても優先順位というものが必要になってくる。時間とエネルギーをどのように振り分けていくかという順番作りだ。ある年齢までに、そのようなシステムを自分のなかにきっちりこしらえておかないと、人生は焦点を欠いた、めりはりのないものになってしまう。(p.58)
結局のところ、僕らにとってもっとも大事なものごとは、ほとんどの場合、目には見えない(しかし心では感じられる)何かなのだ。そして本当に価値のあるものごとは往々にして、効率の悪い営為を通してしか獲得できないものなのだ。(p.231)
●心とからだ
健康な自信と、不健康な慢心を隔てる壁はとても薄い。(p.79)
筋肉の特性は、専門的なことはよくわからないけれど、ある程度まで生まれつきのものではないかと思う。そしてそのような筋肉の特性は、そのまま僕の精神的な特性に結びついているような気がする。(中略)僕に言えるのは、人には生まれつきの「総合的傾向」のようなものがあって、本人がそれを好んだとしても好まなかったとしても、そこから逃れることは不可能ではないかということくらいだ。傾向はある程度まで調整できる。しかしそれを根本から変更することはできない。人はそれをネイチャー(性格)と呼ぶ。(p.117)
●書くことと走ること
小説を書くことは、フルマラソンを走るのに似ている。(p.23)
小説を書くのが不健康な作業であるという主張には、基本的に賛成したい。我々が小説を書こうとするとき、つまり文章を用いて物語を立ち上げようとするときには、人間存在の根本にある毒素のようなものが、否応なく抽出されて表に出てくる。作家は多かれ少なかれその毒素と正面から向かい合い、危険を承知の上で手際よく処理していかなくてはならない。(中略)それはどのように考えても「健康的」な作業とは言えないだろう。
(中略)
しかし僕は思うのだが、息長く職業的に小説を書き続けていこうと望むなら、我々はそのような危険な(ある場合には命取りにもなる)体内の毒素に対抗できる、自前の免疫システムを作り上げなくてはならない。(中略)そしてこの自己免疫システムを作り上げ、長期にわたって維持していくには、生半可ではないエネルギーが必要になる。(中略)我々自身の基礎体力のほかに、そのエネルギーを求めるべき場所が存在するだろうか?
(中略)
真に不健康なものを扱うためには、人はできるだけ健康でなくてはならない。(p.133-135)
●生きること
与えられた個々人の限界の中で、少しでも有効に自分を燃焼させていくこと、それがランニングというものの本質だし、それはまた生きることの(そして僕にとってはまた書くことの)メタファーでもあるのだ。(p.115)
あるだけのもので我慢する。何かがあるだけでもありがたいのだと思う。そんな風に思えるのは、年を取ることの数少ないメリットのひとつだ。(p.119)
北京で発見!中国テニスの強さの秘密






コータロー:所長、おひさしぶりです。
キメ子:ブログが更新されないから心配してたのよ。
所長:北京出張五日間。電脳日記的更新不能。
コータロー:所長が変になっちゃった。
キメ子:北京に出張してたって言いたいみたいよ。ホントは遊んでたんでしょうけど。
所長:我責任感強力、愛社精神旺盛、業務専念杓子定規。
キメ子:かわいい研究員におみやげは?
所長:購買時間皆無。写真的代替土産請照覧。
キメ子:全米の後、北京で開かれる大会の宣伝ね。こんな写真撮って遊んでたの。
所長:広告看板偶然発見。
コータロー:中国ではテニスは盛んなんですか?
所長:網球打具携帯人士唯一散見於大北京。網球愛好者僅少。
コータロー:でも、けっこう強いですよね、特に女子は。
所長:我洞察中国網球的強度的秘密。
キメ子:中国の強さの秘密?
所長:中国人歩行者、自動車繁忙往来大路悠々横断。
中国人自動車、強引割込、突然車線変更、我先合流。
コータロー:ドライバーや歩行者のマナーが悪いってことですか?
所長:日常生活決死覚悟、反射神経強化、強靭精神鍛錬。
キメ子:来年のオリンピックまでずっと行ってれば。
所長:謝謝。
ミドルサンデーの奇跡
ウィンブルドンがミドルサンデーの静寂に包まれていたとき、わがT-Oneは、横浜三ツ沢競技場で神奈川区の団体戦を闘っていた。結果はコンソレ(1回戦敗退チームによるトーナメント)の3位だった。
春の本戦3位とは比ぶべくもないが、勝負は時の運、ドローのいたずら。勝ち負けよりも、とは言わないが、大切なのはそこに至る戦いだ。T-Oneのミドルサンデーは、2人の美少女がもたらした奇跡の勝利によって末永く記憶に残る1日となった。春の奇跡に続く、夏の奇跡の1試合を報告しよう。
奇跡が起きたのはコンソレ1回戦。2勝2敗のあと、チームの勝敗を決する5試合目の女子ダブルでのことだった。
T-Oneの女子ダブルスはK田・Y本ペア。本戦1回戦の敗北を心理的にひきずる乙女2人。チームの勝敗という重圧がかかる展開になったことも作用して、あっという間に0-5という一方的なスコアに追い込まれた。
しかし、応援していたチームメートが敗戦を覚悟した時、奇跡が始まった。
Y本:(瀬川瑛子の口調で)あンら~0-5だわ、どうしましょう、いやだわ~。
K田:(ジャガー横田の口調で)0-5だなんて、冗談じゃないわ。
オバサンをなめたら痛い目にあうってことを思い知らせてやらなきゃ。
年齢だったら軽くダブルスコアで勝ってるんだから。
スクールだって、どれだけ投資したと思ってるのよ!
2人の元・美少女(この記事の最初のほうで「元」が抜けていました)の不思議な脱力と迫力が一方的な展開にストップをかけ、対戦相手の現・美少女ペアのプレーが微妙に変化した。
なんとか1ゲーム取って1-5。ダンゴはまぬがれた。
もう1ゲーム取って2-5。
またもう1ゲーム取って3-5。
さらにもう1ゲーム取って4-5になった。
4人の新旧美少女が顔をこわばらせて闘っているあいだ、T-Oneベンチは大騒ぎ。「え~、逆転しちゃうかも」1ポイントごとに、勝てば歓声が湧き、負ければ溜息がもれる。
そして、ついに5-5。追いついた!
こうなると不思議なもので、もつれたラリーでK田・Y本ペアがポイントを取る割合が増え、勝敗の振り子はあきらかにT-One側に振れた。
6-5。ゲームセット。
K林:どうなったの? え、勝った? どうして?
I洲:あれれ~? 勝っちゃったわ。
K野(強化選手):すご~い! すご~い!
M立: やったあ! やったあ!
S藤(監督):よし! よし! よし!
T橋:すごいですね。んふふ。
M代(強化選手):感動的だなあ。
所長:お~! お~!
感動をそれぞれの言葉で表しながら、応援団が殊勲のK田・Y本ペアに駆け寄った。Y本選手は「あンら~、勝っちゃった。ウソみたいだわ~」と言い、K田選手は涙を流した。
春の本戦3位とは比ぶべくもないが、勝負は時の運、ドローのいたずら。勝ち負けよりも、とは言わないが、大切なのはそこに至る戦いだ。T-Oneのミドルサンデーは、2人の美少女がもたらした奇跡の勝利によって末永く記憶に残る1日となった。春の奇跡に続く、夏の奇跡の1試合を報告しよう。
奇跡が起きたのはコンソレ1回戦。2勝2敗のあと、チームの勝敗を決する5試合目の女子ダブルでのことだった。
T-Oneの女子ダブルスはK田・Y本ペア。本戦1回戦の敗北を心理的にひきずる乙女2人。チームの勝敗という重圧がかかる展開になったことも作用して、あっという間に0-5という一方的なスコアに追い込まれた。
しかし、応援していたチームメートが敗戦を覚悟した時、奇跡が始まった。
Y本:(瀬川瑛子の口調で)あンら~0-5だわ、どうしましょう、いやだわ~。
K田:(ジャガー横田の口調で)0-5だなんて、冗談じゃないわ。
オバサンをなめたら痛い目にあうってことを思い知らせてやらなきゃ。
年齢だったら軽くダブルスコアで勝ってるんだから。
スクールだって、どれだけ投資したと思ってるのよ!
2人の元・美少女(この記事の最初のほうで「元」が抜けていました)の不思議な脱力と迫力が一方的な展開にストップをかけ、対戦相手の現・美少女ペアのプレーが微妙に変化した。
なんとか1ゲーム取って1-5。ダンゴはまぬがれた。
もう1ゲーム取って2-5。
またもう1ゲーム取って3-5。
さらにもう1ゲーム取って4-5になった。
4人の新旧美少女が顔をこわばらせて闘っているあいだ、T-Oneベンチは大騒ぎ。「え~、逆転しちゃうかも」1ポイントごとに、勝てば歓声が湧き、負ければ溜息がもれる。
そして、ついに5-5。追いついた!
こうなると不思議なもので、もつれたラリーでK田・Y本ペアがポイントを取る割合が増え、勝敗の振り子はあきらかにT-One側に振れた。
6-5。ゲームセット。
K林:どうなったの? え、勝った? どうして?
I洲:あれれ~? 勝っちゃったわ。
K野(強化選手):すご~い! すご~い!
M立: やったあ! やったあ!
S藤(監督):よし! よし! よし!
T橋:すごいですね。んふふ。
M代(強化選手):感動的だなあ。
所長:お~! お~!
感動をそれぞれの言葉で表しながら、応援団が殊勲のK田・Y本ペアに駆け寄った。Y本選手は「あンら~、勝っちゃった。ウソみたいだわ~」と言い、K田選手は涙を流した。
三ツ沢4番コートの奇跡
神奈川区団体戦。T-Oneの3回戦は2勝2敗となり、チームの勝敗は5試合目の男子ダブルスで決まる展開となった。
私自身は1試合目に起用されたがあっさりと負けてしまった。2試合目も負けた時点で、チームの敗退を確信した。ところが、次の2試合に勝ったため、逆転勝ちの目が出てきた。おいおい、勝つかもしれないよ……と思いながら、私はM越・Yasuペアの試合が行なわれている4番コートに走った。
コートサイドにいたYasu夫人に、おそるおそる「どうなってる?」と訊いたら、期待と不安を同居させたような表情で答えが返ってきた。
「いま3-3で、いい感じです。でも、M越さんの足が……」
見ると、M越さんが右足をひきずっている。
「M越さん、大丈夫、大丈夫。足が攣って死んだ人いないから」
いささかブラックな激励を飛ばしたが、深刻なようだ。
M越選手はほとんど動くことができない。手の届くところに来たボールにラケットを出すのが精一杯という状態だった。パートナーのYasu選手は、ラリーになることを避けて一発勝負に徹しているように見えた。40-15からYasu選手のストレートリターンが相手前衛の横を抜けた。ゲームカウント4-3。すごい。勝ってしまうかもしれない。
しかし、M越選手は立っているのも辛い状況だった。
チェンジコートで応急手当をしていると、大会委員長がやってきた。
「続けるか、続けないか、結論を言ってください」
大会の進行が遅れ気味だったので、たびたび中断する4番コートの様子が気になったようだ。棄権してくれればありがたい、という気持ちが口調ににじみ出ていた。相手ペアも心配そうに見守っている。
これ以上、足を投げ出して休んでいることはできない。せっぱつまった空気が4番コートを覆った。
Fronta監督が最後の確認をした。
「どうですか? 無理そうならやめてください」
私はその横で、もしかしたら勝てるかもしれない試合だ、できれば続行してほしい、と思っていた。チーム2敗のあと3面同時進行となっていたため、M越選手は他の試合の結果を知らない。「いま2勝2敗なんです」と言いたくなる気持ちをこらえた。そんな私の心を読んだように、M越選手がたずねた。
「試合はどうなってるの?」
「2-2」
「続けるよ」
M越選手はラケットを杖のように突いて立ち上がった。
ゲームカウント4-3からの8ゲーム目はM越選手のサービスゲーム。ファーストサーブが入らない。しかし、アンダーハンドのセカンドサーブを、なんと相手が2本リターンミス。やりにくそうだ。
逆に、力みが消えたM越選手からミスが消えた。パートナーのYasu選手は、「M越さんは立ってさえいてくれたら、ボク一人で勝ってみせる」と思ったかどうかはわからないが、鬼神が乗りうつったようなショットで相手をたびたびたじろがせた。
大会委員長が「勝っちゃうかもしれないよ」とつぶやくのが聞こえた。
1ゲームずつ取り合って5-4でチェンジコート。Yasu選手のサービング・フォー・ザ・マッチである。
強烈なファーストサーブで40-15になった。なんとダブルのマッチポイントだ。しかし、ダブルフォールトがあって40-40。ノーアドバンテージの1発勝負となった。
5-5にされたら、さすがにもう勝てないかもしれない。
しかし、M越・Yasuペアは臆することなく立ち向かう。再び三度の渾身のサーブが放たれた。
エースか!? と息をのんだが、鋭いリターンが返ってきた。しかし、Yasu選手はあわてず、ぐっと足を踏んばって腰を落とし、狙いすましたフォアのストレートの強打を相手前衛に放った。抜けろ! T-Oneの願いを乗せたボールは、コードにわずかに触れて軌道を変え、前衛のラケットをすり抜けた。
ベスト4進出が決まった瞬間だった。
相手ペアに敬意を表したい。何度か進行が中断したし、動けない相手をあからさまには攻撃しづらいという当然の思いでコースも制限されたことだろう。4人とも万全の状態なら、結果は逆だったかもしれない。恨み言のひとつも言いたくなるのが人情だが、そんな素振りはみせず、われわれの勝利を祝福してくれた。
さて、チームは準決勝に進出したが、M越選手はもう1試合できる状態ではなかった。奇跡的勝利の立役者である“鬼神Yasu”に代わって私がM越選手のパートナーとなるオーダー替えを行なったうえで、5試合あるうちの男子ダブルス1試合を棄権し、残り4試合で決勝進出にチャレンジした。しかし、相手は強豪(最終的に優勝した)で、残り4試合はすべて負け。実力差が歴然ととしていたが、大満足の結果であった。T-Oneの挑戦は続く。
私自身は1試合目に起用されたがあっさりと負けてしまった。2試合目も負けた時点で、チームの敗退を確信した。ところが、次の2試合に勝ったため、逆転勝ちの目が出てきた。おいおい、勝つかもしれないよ……と思いながら、私はM越・Yasuペアの試合が行なわれている4番コートに走った。
コートサイドにいたYasu夫人に、おそるおそる「どうなってる?」と訊いたら、期待と不安を同居させたような表情で答えが返ってきた。
「いま3-3で、いい感じです。でも、M越さんの足が……」
見ると、M越さんが右足をひきずっている。
「M越さん、大丈夫、大丈夫。足が攣って死んだ人いないから」
いささかブラックな激励を飛ばしたが、深刻なようだ。
M越選手はほとんど動くことができない。手の届くところに来たボールにラケットを出すのが精一杯という状態だった。パートナーのYasu選手は、ラリーになることを避けて一発勝負に徹しているように見えた。40-15からYasu選手のストレートリターンが相手前衛の横を抜けた。ゲームカウント4-3。すごい。勝ってしまうかもしれない。
しかし、M越選手は立っているのも辛い状況だった。
チェンジコートで応急手当をしていると、大会委員長がやってきた。
「続けるか、続けないか、結論を言ってください」
大会の進行が遅れ気味だったので、たびたび中断する4番コートの様子が気になったようだ。棄権してくれればありがたい、という気持ちが口調ににじみ出ていた。相手ペアも心配そうに見守っている。
これ以上、足を投げ出して休んでいることはできない。せっぱつまった空気が4番コートを覆った。
Fronta監督が最後の確認をした。
「どうですか? 無理そうならやめてください」
私はその横で、もしかしたら勝てるかもしれない試合だ、できれば続行してほしい、と思っていた。チーム2敗のあと3面同時進行となっていたため、M越選手は他の試合の結果を知らない。「いま2勝2敗なんです」と言いたくなる気持ちをこらえた。そんな私の心を読んだように、M越選手がたずねた。
「試合はどうなってるの?」
「2-2」
「続けるよ」
M越選手はラケットを杖のように突いて立ち上がった。
ゲームカウント4-3からの8ゲーム目はM越選手のサービスゲーム。ファーストサーブが入らない。しかし、アンダーハンドのセカンドサーブを、なんと相手が2本リターンミス。やりにくそうだ。
逆に、力みが消えたM越選手からミスが消えた。パートナーのYasu選手は、「M越さんは立ってさえいてくれたら、ボク一人で勝ってみせる」と思ったかどうかはわからないが、鬼神が乗りうつったようなショットで相手をたびたびたじろがせた。
大会委員長が「勝っちゃうかもしれないよ」とつぶやくのが聞こえた。
1ゲームずつ取り合って5-4でチェンジコート。Yasu選手のサービング・フォー・ザ・マッチである。
強烈なファーストサーブで40-15になった。なんとダブルのマッチポイントだ。しかし、ダブルフォールトがあって40-40。ノーアドバンテージの1発勝負となった。
5-5にされたら、さすがにもう勝てないかもしれない。
しかし、M越・Yasuペアは臆することなく立ち向かう。再び三度の渾身のサーブが放たれた。
エースか!? と息をのんだが、鋭いリターンが返ってきた。しかし、Yasu選手はあわてず、ぐっと足を踏んばって腰を落とし、狙いすましたフォアのストレートの強打を相手前衛に放った。抜けろ! T-Oneの願いを乗せたボールは、コードにわずかに触れて軌道を変え、前衛のラケットをすり抜けた。
ベスト4進出が決まった瞬間だった。
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さて、チームは準決勝に進出したが、M越選手はもう1試合できる状態ではなかった。奇跡的勝利の立役者である“鬼神Yasu”に代わって私がM越選手のパートナーとなるオーダー替えを行なったうえで、5試合あるうちの男子ダブルス1試合を棄権し、残り4試合で決勝進出にチャレンジした。しかし、相手は強豪(最終的に優勝した)で、残り4試合はすべて負け。実力差が歴然ととしていたが、大満足の結果であった。T-Oneの挑戦は続く。
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プロテニス、技術論(屁理屈?)、サイエンス、歴史、文化、雑学…テニスを360°まるかじりしています。
●所長プロフィール
テニス歴だけは無駄に長い週末おやじプレーヤー。最近ときどきバックハンドが打てるようになった。第2スポーツはマラソン。趣味は落語、読書、ブログ、趣味さがし。横浜在住。O型。同年生まれの有名人に明石家さんま、所ジョージ、千代の富士、具志堅用高など。読書ブログ「所長の本棚」もよろしくお願いします。
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