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これまでにも何冊か取り上げましたが、テニスが出てくる小説を紹介します。マデリーン・ウィッカム『悪意と憂鬱の英国式週末テニス』(岡田葉子訳、早川書房)。 ロンドンの証券マンが郊外の自宅でテニス・パーティを計画(原題はThe Tennis Party)。4組の男女がミックスダブルスのテニスと酒と食事を楽しむという趣向です。 舞台は優雅ですが物語はそれど優雅ではありません。ホストは、怪しげなファンドを売りつけて出来高払いのボーナスを手にしようと画策する証券マンとその妻。ゲストは、突如襲った破産の危機に青ざめる資産家夫婦、不運な境遇に鬱々とする学者夫妻、傲慢な実業家と礼儀知らずの娘。社会的地位も価値観も違う4組の男女が、それぞれの思惑を内に秘め、表向きは友好的な(だんだん破綻していきますが)2日間を過ごすという、ブラックなユーモアに満ちた群像劇です。 あまり期待せずに読み始めましたが、次の展開への期待感と意外感でけっこう楽しめました。登場人物は欠点だらけですが、考えてみればみな普通の人間で、読み進むうちに、なんのことはない自分の姿が鏡に映し出されているような気になりました。「悪意と憂鬱」という割に後味が意外とさっぱりしているのは「週末テニス」のおかげでしょうか。
by tennis_passtime
| 2007-12-11 23:59
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