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武士道セブンティーン
誉田哲也著 文藝春秋 2008年7月10日刊 定価:本体1476円+税 剣道に打ち込む女子高生2人が主人公の青春スポーツ小説。『武士道シックスティーン』『武士道セブンティーン』『武士道エイティーン』と続く3部作の2巻目。軽快な空気感がとてもさわやかです。私は年齢的に、作者が想定する読者対象から大きく外れていると思いますが、楽しめればいいんです。気分が若返りますよ。 物語は、対照的なキャラの磯山香織と西荻早苗(離婚した両親が再婚して本書では甲本早苗)の2人の語りが交互に出てくる形で物語が進みます。そこは前に紹介した『武士道シックスティーン』と同じですが、『シックスティーン』が勝負する剣道(香織)と楽しむ剣道(早苗)の衝突と融和という軸で進む物語であったとすれば、『セブンティーン』は、武士道としての剣道(香織の剣道も早苗の剣道も武士道へと通じている)と競技としての剣道の対比を軸として進む物語です。 後者を体現するのは、剣道の高度競技化を追求する、もう1人の女子高生剣士、黒岩レナ(伶那)。フランス人の血が1/4混ざったクォーターにして博多弁でしゃべるレナの考えは以下のごとし。 「竹刀が刀だったらとか、そういう曖昧な想像力で何かを補うよりも、剣道は、一本の基準をもっともっと明確にして、反則もちゃんと、試合中に理由を宣告して、競技としての完成度を上げていった方がよかと思っとーとよ。ルールが明確になれば、今よりもっと一本の基準がはっきりすれば、今までにない技や試合展開が、必ず出てくる。こういう打ち方って駄目かなあ、駄目なんやろうなって、先生の顔色見て諦めてた技も、自分でルールブックを確認してOKやったら、自信を持って出すことができるやろう」(p.110) 「私には、なんで左利きが反対に構えたらいけんのか分からん。高校生が二刀流やったらなんでいけんのかも分からん。私はむしろ、ちゃんと捌けて強く打てるなら、逆手で竹刀を持ってもよかくらいに思っとーとよ。審判だってルールに従って裁くんやから、初めて見る打ち方やって、ルール上OKなら、ちゃんと旗を上げるはずやろう。そういう、きちんと競技化された剣道の方が、個性が出しやすくて、夢があって、面白いと思わん?」(p.110)剣道のことは知りませんが、レナには受け入れ難い、明文化されない非合理的な側面があるんでしょうね。レナの問題意識とは違うと思いますが、私が剣道のユニークさを感じるのは、一本とって思わず喜んだら無効になる(負けになる?)というルール(しきたり?)で、なかなかのものだと思います。たいていのスポーツでガッツポーズは当たり前、柔道でさえ勝ったらピョンピョン跳ねて喜んでいるご時世に、この剣道の禁欲的な姿勢は私には好ましく映ります。 それはともかく、異質な剣道観で邁進する転校先の学校から逃げ出しそうになった早苗が、香織に支えられて踏みとどまる決意を固めるところで物語は終わります。続く『エイティーン』で、武士道剣道と競技剣道がどう切り結ぶのか、香織と早苗の最終対決がどうなるのか、そこにレナはどう絡むのか……とても楽しみです。読んだら報告します。 ●ご用とお急ぎでない方はワンクリックをお願いします。 ●もっとご用とお急ぎでない方は▶所長の読書ブログもご笑覧ください
by tennis_passtime
| 2011-03-30 23:46
| ●読書ノート
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