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事故で右腕は肘から先、左手は手首から先を失ったコウちゃんが、それでもあきらめずに野球を続け、甲子園予選の地方大会にベンチ入りします。同点で迎えた最終回の守備はワンアウト満塁、サヨナラ負けのピンチ。ファウルフライを追った外野手が負傷し、他に控え選手がいなくなったため、急遽コウちゃんがライトの守備につきます。 そこに上がったライトフライ。コウちゃんは捕球できても投げられません。タッチアップしたサードランナーがホームに向かって走り出す。万事休す。だれもがそう思った時に………… コウちゃんが全速力で走ってくる―― ヒートアップしたクライマックスだけ引用しても、このシーンに至るまでの物語の見事さはわかっていただけないでしょうけど。「走れ、コウちゃん」(工藤哲)は「第1回さいたま市スポーツ文学賞」(2002年)の佳作に選ばれた作品で、『SPORTS STORIES』(ぎょうせい)という本に収録されています。受賞作はいずれ劣らぬ力作ぞろいですが、私が選考委員なら迷わず、友情・努力・勝利の「走れ、コウちゃん」を大賞に推したと思います。 第1回さいたま市スポーツ文学賞の受賞作 大賞「サハラマラソン 沈没日記」前田恵実子(サハラマラソン) 優秀賞「僕たちは季節を知る」風野涼一(マラソン) 優秀賞「願いの叶う日のために」塚原桂子(女子サッカー) 佳作「走れ、コウちゃん」工藤哲(野球) 佳作「テイク・ファイブ」村松滋(ボクシング) 「サハラマラソン 沈没日記」は過酷な砂漠のウルトラマラソンに挑んだ女性ランナーの記録。「僕たちは季節を知る」は、市民マラソン大会に出場した性同一性障をもつカップルを描いて、自分自身を悔いなく生きる意味を掘り下げた深みのある作品。「願いの叶う日のために」は、15歳になる前にガンで死んだサッカー少女へのオマージュ。「テイクファイブ」はジャズの変拍子で戦う不器用なボクサーの話。私のスポーツ小説フェチ度を割り引いても、自治体主催の文学賞にこんなに読み応えのある作品が揃っているとは驚きでした。 ●さいたま市、やるじゃん、と思った方はしたのアイコンをクリックしてください。
by tennis_passtime
| 2009-06-13 10:49
| ●読書ノート
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